脊椎側弯症とは
脊柱は縦の方向にはまっすぐに通っているのが通常です。しかし、これが何らかの理由で左か右に弯曲してしまった状態になることがあります。これが脊椎側弯症です。側弯症は、特定の疾患や痛みといった原因が無いのに発症する突発性側弯症、先天的に曲がった状態で生まれてくる先天性側弯症、何らかの疾患があって弯曲してしまう症候性側湾症があります。突発性側弯症では思春期の女性に発症しやすい思春期突発性側弯の症例が多く診られます。弯曲の状態にあわせて適切な治療を行います。
脊椎側弯症の原因・種類
脊柱側弯症は脊椎のねじれを伴うかどうかで、機能性側弯症と構築性側弯症に分類されます。側弯症が起こる原因は様々で、はっきりと解明されていないものもあります。
機能性側弯
機能性側弯症は、痛みや左右の足の長さの違い、傾いた姿勢をとり続けることなど、何らかのはっきりした原因から起こる脊柱の弯曲で、脊椎の捻れはありません。弯曲を起こしている原因を取り除いてしまうことで、弯曲は解消していきます。
構築性側弯
脊椎が捻れを伴って正面から見て左右のどちらかへ弯曲してしまっている状態で、簡単には元にもどりません。構築性湾曲症には、原因が不明な突発性弯曲と様々な原因から起こるものがあります。
特発性側弯症
特発性(とくはつせい)とは、現時点で原因が分かっていないことを指す医療用語です。つまり、原因不明の脊柱側弯症ということになります。多くは幼少時から思春期にかけて発症し、その発症年齢によって3歳以前に発症し男児に多い乳幼児期側弯症、4~9歳に発症し、進行することが多い学童期側弯症、10歳以降に発症し女性に多い思春期側弯症と3種類に分類されています。特発性側弯症は脊柱側弯症全体の8割程度を占めています。
先天性側弯症
椎骨など形に生まれつき異常があって起こる側弯症です。形の異常によって、成長期に左右の成長に差がでることで発症します。脊柱以外の臓器や組織などにも先天的な異常がある場合が多く注意が必要です。
神経原性側弯症
様々な疾患によって神経が障害され、脊柱を支える背中や脇腹などの筋肉が麻痺することで起こります。脳性麻痺などの疾患から起こります。
筋原性側弯症
脊柱を支える筋肉そのものの疾患によって、側弯が起こります。筋ジストロフィーなどが代表的な疾患です。
間葉系疾患による側弯症
血管や心臓などの循環器系細胞を形作る未分化細胞の間葉系細胞に生まれつきの疾患があることで起こる側弯症です。ともに難病指定されているマルファン症候群やエーラス・ダンロス症候群などが代表的な疾患です。
その他の側弯症
小児期に病気や外傷で脊髄麻痺がおこったり、火傷や放射線治療でケロイドが起こったりといった原因からくる側弯症、くる病などの代謝系疾患などその他にも、様々な原因から側弯症が起こることがあります。
脊椎側弯症の症状
軽度の側弯症では多くの場合、痛みなどの身体的症状は伴いません。外見上はっきりした特徴としては、左右の肩や腰の高さが異なる、左右の肩甲骨のどちらかが飛び出している、胸郭の片方が飛び出しているといった症状があらわれます。側弯が重度になると骨による圧迫で椎間板がすり減るなど、加齢による脊柱疾患と同様の症状があらわれます。
脊椎側弯症の検査・診断
側弯症の確定診断には、X線による画像検査が必要ですが、日常生活の中でちょっとした注意を払うことで、側弯症に気づくことが可能です。たとえば入浴中身体を洗ってあげる時、着替えをさせる時などに身体の左右のバランスを見ることだけでもある程度気づくことが可能です。また、側弯症など身体のバランスを見る立位検査や前屈検査といった簡単なテストもあります。
立位検査
検査者に対して後ろ向きになりまっすぐ立ちます。検査者は肩の高さに左右差が無いか、肩甲骨の高さと飛び出し方に左右差が無いか、腰の飛び出した部分の左右の高さに違いが無いかについて確認します。
前屈検査
両手の手の平をあわせ、両腕を自然に垂らした形で、膝を曲げずに身体を前屈させます。検査者は被検者の前や後から肋骨、腰の左右に異常な盛り上がりができないか、左右の高さが違わないかを確認します。
日常生活の視認やこれらの検査で側弯症が疑われる場合、脊柱のX線検査を行い、確定診断となります。軽度の側弯症で治療を必要としないケースでも、その後の経過観察は大切です。
脊椎側弯症の治療
側弯症の治療は、側弯の度合いと患者様の成長度合いによって異なります。X線画像によってもっとも曲がりの強い2つの椎体から直線を伸ばし、交差する角度であらわすコブ角を測り側弯症かどうかや重症度を診断します。治療が必要ない場合もその後の成長過程で進行がないか経過確認することが大切です。
軽度~中程度の場合
一般的にコブ角が25~40度程度の中等度の側弯症や、コブ角が20~25度でもこれからまだ2次成長が始まっていない場合や、進行中、終わったばかりといった成長過程にあるお子様の場合装具療法が有効です。装具療法では脇の下からお尻の部分までを固定する大きなコルセットを、成長が止まる時期まで装用することで、側弯の矯正が期待できます。
中程度~重度の場合
コブ角が45度以上ある側弯になると、痛み以外に、神経が圧迫されることで下肢の痺れなどの症状の他、消化器や肺、心臓などが圧迫されることで消化器障害や呼吸器障害、体力低下などの症状があらわれることもあります。そのため、これらの症状が強い場合、手術治療を検討することになります。手術治療には神経の圧迫を取り除いたり、曲がっている部分の骨を金属などで固定したりするなど、障害の程度に応じた術式があります。
学校検診で「背骨」の
指摘をされた方へ
2016年度から実施された運動器学校検診では、側弯症なども含め、小学校1年生から高校3年生までのお子様の運動器の状態を総合的に観察します。まず家庭でお子様の背骨や手足についての評価を行い、その後学校医が視診・触診で総合的に診断を行います。検診の結果、側弯の可能性が指摘された場合、できるだけ早く整形外科を受診してください。また一度の検診で異常無しでも成長期にあるかぎり毎年経過を観察することが大切です。
脊椎側弯症のよくある質問
脊椎側弯症の起きやすい年齢はありますか?
ケガや疾患などによる側弯症には好発年齢はありませんが、罹患数の多い特発性側弯症では、2次成長期の開始から終了までの時期、特に思春期のお子様に発症することが多くなっています。
姿勢に気をつけていれば脊椎側弯症にはなりませんか?
極端に偏った姿勢をとり続けることで側弯症を起こすことも無いわけではありませんので、正しい姿勢をとることは大切です。しかし、姿勢を正したからといって側弯症の進行を止めることはできません。
脊椎側弯症は遺伝しますか?
思春期特発性側弯症は、近年側弯症に関する遺伝子研究が進み、側弯症の発症に関連していると考えられる遺伝子や、側弯症の進行に関連していると考えられる遺伝子が発見され、遺伝子分野での解明が進んでいます。こうしたことから、両親のいずれかが側弯症の経歴がある場合やお子様の一人に側弯症が発見された場合、家族内のお子様すべてについて念のために整形外科などの専門医に確認してもらうことをお勧めしています。
脊椎側弯症を放置するとどうなりますか?
多くの場合、お子様の成長が終了すると、変型の進行も止まります。しかし、コブ角が大きく重症の側弯がある場合、成長終了後も変型が進んでしまうケースが多くなっています。その場合、外形の問題だけではなく、消化器や呼吸器、心臓など内臓への影響、神経の圧迫による神経障害などが進行してしまう可能性が高く、神経障害では歩行困難などに至ったり、内臓の圧迫では消化機能の低下だけではなく、呼吸機能の障害や心不全といった重篤な状態に至ったりすることもありますので、専門医と相談し、しっかりと治療を行っていくことが大切です。