歩くと膝が痛い!
膝の痛み(膝関節痛)とは
膝痛とは、膝関節周辺に痛みが生じている状態のことで、代謝性疾患やリウマチ性疾患、腫瘍性疾患、外傷性疾患、変形性疾患などのさまざまな疾患により起こります。また、膝痛は歩行動作や昇降動作の際に生じるものや、何もしていなくても痛みがあるものなど、痛みの特徴もさまざまです。膝痛の治療では原因の特定が重要であり、レントゲン検査や超音波検査などのさまざまな検査を行って異常を調べます。膝痛の原因となる疾患や症状の進行によっては、歩行困難や寝たきりなどの深刻な障害が起こることもあるため注意が必要です。
膝の痛み(膝関節痛)の原因
膝関節軟骨のすり減り
膝関節には関節の表面を覆う軟骨があり、膝関節の骨(大腿骨・脛骨)の消耗を防ぎ、膝関節の動きを滑らかにしています。この膝関節軟骨は、ヒアルロン酸によって弾力が保たれています。年を取ると、ヒアルロン酸が減少していき、膝の関節軟骨がすり減ることで膝関節が変形し、激しい痛みが起こるようになります。また、膝関節軟骨がすり減ることで生じる軟骨や半月板の破片が滑膜を刺激することで炎症や痛みが生じることもあります。
膝関節周りの筋力低下
膝関節周辺の筋力が低下すると、膝関節が不安定になり、膝関節軟骨への負担が増加し、痛みが生じます。主に中高年に多く見られますが、30代から発症することもあります。
膝に負担をかける「肥満」や「O脚」
肥満は、膝への負担を増加させるため、膝関節痛の原因になります。また、膝が外側に湾曲するO脚は、膝の内側への負担を増加させるため、膝関節軟骨がすり減る原因となります。日本人はO脚傾向にある人が多いです。
運動不足
運動不足であると、膝関節周辺の筋力が低下することで、膝関節痛が起こります。ただし、膝関節の軟骨や半月板を損傷している状態で運動をすると、さらに膝関節軟骨が消耗してしまうため、注意が必要です。膝に引っかかりを感じる場合は、半月板が損傷している可能性もあります。
膝の痛み(膝関節痛)の場所から
考えられる原因
膝の内側が痛い
膝の内側に痛みがある場合は、膝関節軟骨のすり減りや、鵞足(膝の内側にある3つの腱の付着部)の炎症、内側半月板の損傷、内側側副靭帯の損傷、内側滑膜ヒダ(膝のお皿の内側にある軟部組織)の炎症などが考えられます。
膝の外側が痛い
膝の外側に痛みがある場合は、腸脛靭帯(膝の外側を走る腱)の炎症、外側半月板の損傷、外側側副靭帯の損傷などが考えられます。
膝の裏が痛い
膝の裏側に痛みがある場合は、靭帯の損傷や半月板の損傷が考えられる他、ベーカー嚢腫などの疾患が生じている可能性が考えられます。
膝の上(お皿)が痛い
膝のお皿に痛みがある場合は、膝蓋骨や大腿四頭筋の炎症が考えられます。スポーツなどの反復動作によって膝を使いすぎたことによって生じることが多いです。
膝の痛み(膝関節痛)を起こす疾患
変形性膝関節症
変形性膝関節症とは、加齢や外傷によって膝関節軟骨がすり減り、膝関節が変形することで膝関節に痛みや腫れが生じる疾患です。軽症のうちは起立動作や歩行動作によって一時的な痛みが生じますが、しばらくすると痛みが治まることが多いです。しかし、症状が進行すると、階段の昇降や正座が困難になり、末期になると膝を伸ばしきることができなくなります。自覚症状がない場合も多く、発症していても必ずしも痛みがあるわけではありません。高齢になるほど発症率が高くなり、女性に多い疾患です。
関節リウマチ
関節リウマチとは、免疫の異常によって関節に炎症が起こり、痛みや腫れ、関節の変形が生じる疾患です。関節リウマチは全身に症状が起こる疾患ですが、関節リウマチの症状が膝に起こると、膝に水が溜まって歩けなくなったり、膝関節の骨や軟骨が破壊され関節が動かせなくなります。関節リウマチの初期症状は、発熱や食欲低下、全身倦怠感、関節のこわばりなどで、症状が進むにつれて、手足の関節、肩、肘、手首、膝、股関節、足首など全身のさまざまな関節に症状が広がっていきます。
半月板損傷
半月板損傷とは、半月板と呼ばれる膝関節にかかる衝撃を吸収するクッションの役割をしている軟骨のような組織に亀裂が入ったり、割れている状態です。半月板を損傷すると膝関節が不安定になり、膝の曲げ伸ばし動作で痛みが生じたり、膝関節が伸びなくなったり曲がらなくなったりします。半月板は加齢とともにすり減っていきます。半月板の消耗自体では痛みは生じませんが、半月板の消耗に伴って筋肉が収縮し炎症が起こることで痛みが生じます。
急性関節炎
急性関節炎とは、関節に生じる急性の炎症の総称です。膝に急性の炎症が生じた場合は、偽痛風や痛風、化膿性膝関節炎などの疾患が考えられます。偽痛風とは、関節軟骨や周辺組織にピロリン酸カルシウムという結晶が沈着することで痛風のような強い関節炎が起こる疾患です。化膿性膝関節症とは、膝関節に細菌が感染することで炎症が起こり、強い痛みや発熱などの症状が生じる疾患です。治療が遅れると、関節が壊れたり、全身に細菌が回って命に関わる場合もあります。
オスグッド・シュラッター病
オスグッド・シュラッター病とは、膝のお皿の下の骨(脛骨粗面)が盛り上がり、痛みが起こる疾患です。膝の代表的なスポーツ障害であり、小学生から中学生の成長期の子どもに起こります。オスグッド・シュラッター病は膝関節の使い過ぎに加えて、大腿四頭筋の柔軟性の不足によって発症します。痛みを我慢して運動を継続する場合も多いですが、痛みが強い場合は、運動を中止して治療を行います。筋肉の硬さや筋力不足が原因となって発症するため、リハビリテーション治療によって調整し、痛みの軽減や再発防止を行います。
膝の痛み(膝関節痛)の症状
- 膝がズキッと痛む
- 膝がピキッとなる
- 膝がボキボキ、ゴリゴリ鳴る
- 膝が痛いけどどこが痛いかわからない
- 膝が抜ける感じ
- 関節が外れた感じ
- 膝がグラグラする
- 長引く膝の痛み
- 湿布貼っても膝の痛みが消えない(効かない)
日常生活の動作で感じる膝の痛み
- 体重かけると膝が痛い
- 安静時で(寝ていて)も膝がジーンとする
- 歩くと膝が痛い
- 階段を上ると膝が痛む
- 膝が曲げ伸ばしにくい
- 正座がしづらい
- 立ち膝をすると痛い
- しゃがめない
膝の痛み(膝関節痛)に対する
診断・検査
膝関節に痛みがある場合は、まずは問診と触診を行い、膝痛の特徴を確認します。その後、レントゲン検査や必要に応じてMRI検査などの検査を行い、診断を行います。特に膝関節軟骨損傷や半月板損傷が疑われる場合は、レントゲン検査では確認ができないため、MRI検査を行います。MRI検査が必要と判断された場合、関連する医療機関をご紹介させていただきます。
膝の痛み(膝関節痛)の治療(治し方)
膝関節の痛みは症状に合わせて治療法が異なります。症状に合わせた適切な治療を行うことが重要です。
トレーニング・ストレッチ
変形性膝関節症や半月板損傷、鵞足炎、腸脛靭帯炎、膝蓋腱炎などの筋力の不足が原因となり、膝に負担がかかることで膝関節の痛みが生じている疾患の場合は、トレーニングやストレッチなどの運動療法によって改善していきます。トレーニングやストレッチはご自宅でも簡単にできる方法をリハビリで指導しています。
ヒアルロン酸注射
変形性膝関節症や半月板損傷などの膝関節軟骨が損傷している場合には、ヒアルロン酸注射を行います。ヒアルロン酸を膝に注射すると、膝関節の動きが良くなり、痛みも改善されます。ヒアルロン酸注射の効果は1~2週間程度で切れてしまうため、定期的に治療を行う必要があります。
再生医療・PRP療法(PRP-FD療法)
PRP療法は患者様の血液から抽出した血小板を患部に注射することで、損傷した組織の自己回復力を高める治療法です。日帰りでの治療が可能で、体への負担も小さく、自己組織を用いるため副作用がほとんどない治療法です。ヒアルロン酸注射での治療効果が感じられなくなったり、手術をしたくない場合にお勧めの治療法です。
手術
生活への支障が大きく、トレーニングやストレッチ、ヒアルロン酸注射による治療を行っても、痛みが改善しない場合に手術が検討されます。手術は、関節鏡視下手術、脛骨骨切り術、人工関節置換術の3種類があり、膝関節の状態に応じて手術方法を選択します。
膝が痛いときにやってはいけないこと
膝関節に痛みがある場合は、膝に負担をかける動作や生活習慣を避けるようにしましょう。過度な運動や方向転換・回転などの俊敏な動きは膝の皿に負担をかけ、痛みが強くなることがあります。また、足に合わない靴は膝へ負担をかけ、膝関節の痛みを起こすことがあります。膝の疾患は治療を怠ると、慢性障害に発達するものがあるため、痛みは放置せず、適切な治療を受けましょう。
膝の痛みを
そのままにしておくとどうなる?
中高年になるとひざの痛みを感じることが多く、その主な原因は変形性膝関節症です。変形性膝関節症は、軟骨がすり減ることで関節が変形する疾患であり、日本では50歳以上の2人に1人がこの疾患を有すると推定されています。今後、高齢化の進行に伴い、患者数はさらに増加すると考えられます。
ただし、変形性膝関節症があっても必ずしも痛みを伴うわけではありません。痛みを感じないケースも多く、その理由は軟骨に神経がないためです。軟骨がすり減るだけでは痛みは生じず、実際に痛みを引き起こすのは神経が存在する骨や滑膜の異常です。
さらに、ひざの痛みが長引くと、痛みを感じる神経系に変化が生じることが分かっています。その一つが「疼痛感作」という状態で、痛みを脳に伝える神経が過敏になることによって、わずかな刺激でも強い痛みを感じるようになります。
もう一つが「内因性鎮痛機能不全」で、本来人間が持っている痛みを抑える仕組みが正常に働かなくなる状態です。
この「疼痛感作」と「内因性鎮痛機能不全」によって、ひざの痛みは慢性化し、治りにくくなることが最近注目されています。